アンダーソンのリハビリ中止基準とは?ーリハビリの安全を守るためにー
リハビリテーションは、患者の機能回復や生活の質(QOL)向上を目指す重要なプロセスです。
しかし、すべての患者が順調にリハビリを継続できるわけではなく、ときには中止や延期が必要になることもあります。
そこで重要なのが、リハビリの「中止基準」です。
中でも、アンダーソンのリハビリ中止基準(Anderson’s Criteria for Discontinuation of Rehabilitation)は、リハビリテーション中のリスク管理において広く参照される指標の一つです。
本記事では、アンダーソンのリハビリ中止基準について詳しく解説し、臨床現場での活用方法を紹介します。
アンダーソンのリハビリ中止基準とは?
アンダーソンのリハビリ中止基準は、リハビリテーション中に患者の健康状態が悪化し、安全にセラピーを続けられない場合に適用される基準です。
これにより、無理なリハビリによる事故や症状の悪化を防ぐことができます。
この基準は特に循環器疾患や呼吸器疾患を抱える患者において重要視されており、心肺機能に関する指標を中心に設定されています。
アンダーソンのリハビリ中止基準の詳細
アンダーソンの基準には、リハビリを中止すべき生理学的指標が含まれています。主な項目を以下に示します。
① バイタルサインの異常
リハビリ中に以下のようなバイタルサインの異常が見られた場合、中止を検討する必要があります。
• 心拍数(HR)
• 安静時心拍数が120回/分以上または40回/分以下
• リハビリ中に30回/分以上の増加
• 不整脈の増悪(新たな不整脈の出現や頻度の増加)
• 血圧(BP)
• 収縮期血圧(SBP)が200mmHg以上または90mmHg以下
• 拡張期血圧(DBP)が110mmHg以上
• 運動中の収縮期血圧が20mmHg以上の低下
• 酸素飽和度(SpO2)
• 90%以下(COPD患者の場合は88%以下)
② 症状の出現・増悪
患者が以下のような症状を訴えた場合は、リハビリを中止し、必要に応じて医師の診察を受けるべきです。
• 強い息切れ(Borgスケールで5以上)
• 胸痛や狭心症症状(圧迫感、放散痛など)
• めまい、ふらつき、失神
• チアノーゼ(唇や爪が青紫色になる)
• 冷汗や異常な疲労感
③ 神経学的異常
• 意識障害(反応が鈍い、もうろうとする)
• 失語や半身麻痺などの脳血管障害を疑う症状
• けいれん発作の発生
④ 運動機能の異常
• 筋力低下の急激な悪化
• 関節や筋肉の強い痛み(外傷や炎症の疑い)
• 平衡感覚の喪失(転倒リスクの増加)

アンダーソンの基準を現場でどう活用するか?
① 評価の徹底
リハビリ前後でバイタルサインや症状の変化を確認することが重要です。
特に心肺疾患の患者では運動負荷試験や**6分間歩行テスト(6MWT)**などで許容範囲を評価しておくとよいでしょう。
② 安全な運動負荷の設定
心拍数や血圧の変動が大きい場合は、強度を下げる、頻度を減らす、休憩を増やすといった調整を行います。Borgスケール(自覚的運動強度の指標)を活用するのも有効です。
③ チームで情報を共有する
リハビリ担当者だけでなく、医師・看護師・臨床工学技士・栄養士などと連携し、患者の状態を共有することが大切です。特に退院後のリハビリでは、在宅での指導も含めた包括的な支援が求められます。
④ 緊急時対応の準備
リハビリ中に異常が起きた場合、速やかに救急対応ができる体制を整えておくことが重要です。緊急時の対応マニュアルを作成し、スタッフ全員が共有しておきましょう。
まとめ
アンダーソンのリハビリ中止基準は、リハビリの安全性を確保するための重要な指標です。
特に心肺機能に関わる患者では、バイタルサインの異常、症状の出現、神経学的変化、運動機能の異常といった点に注意を払う必要があります。
安全なリハビリを提供するためには、事前評価の徹底・適切な運動負荷の設定・チーム連携・緊急時対応の準備が欠かせません。
リハビリテーションは患者の回復を助ける重要なプロセスですが、無理をすると逆効果になることもあります。
アンダーソンの基準を活用しながら、患者の安全を最優先に考えたリハビリを実践していきましょう。
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