脳卒中後の"痙縮"とは?原因・症状・治療法を詳しく解説
脳卒中後の後遺症のひとつである「痙縮(けいしゅく)」は、筋肉の過剰な緊張によって関節が動かしにくくなる状態を指します。
痙縮が強いと、リハビリの進行や日常生活に大きな影響を及ぼすため、適切な理解と対応が重要です。
本記事では、痙縮の原因、症状、代表的なパターン、治療法について詳しく解説します。
痙縮とは?
痙縮とは、脳卒中によって運動を制御する神経が損傷し、筋肉の収縮が異常に亢進した状態です。
通常、脳からの指令によって筋肉の緊張は適切に調整されていますが、
神経の損傷によってこの調整がうまくいかなくなると、
筋肉が過度に収縮し続け、関節が硬くなったり動かしにくくなったりします。
痙縮の主な症状
• 筋肉の硬直による関節可動域の制限
• 特定の動作(例:腕を伸ばす、足をまっすぐにする)が困難
• 強く握りしめるような手の形(握り拳)になる
• 歩行時につま先が下がり、引っかかる(尖足)
• 痛みやこわばりを伴うことがある
痙縮は発症後数週間から数ヶ月以内に現れることが多いですが、遅れて発症する場合もあります。
痙縮のパターン
痙縮のパターンは、「屈曲パターン(flexor pattern)」と「伸展パターン(extensor pattern)」の2種類に分けられます。
それぞれ、上肢(腕)と下肢(脚)で特徴が異なります。
上肢の痙縮パターン

引用:https://www.chiba-reha.jp/media/news-33.pdf
✅ 屈曲パターン(Flexor Pattern)(最も一般的)
• 肩が内側に巻き込まれる(内転・内旋)
• 肘が曲がり、伸ばしにくい(屈曲)
• 手首が曲がる(屈曲)
• 指が握りこまれる(屈曲)
✅ 伸展パターン(Extensor Pattern)(まれ)
• 肩が外側に広がる(外転)
• 肘が伸びきって硬くなる(伸展)
• 手首と指が伸びたままになる(伸展)
下肢の痙縮パターン

引用:https://www.chiba-reha.jp/media/news-33.pdf
✅ 屈曲パターン(Flexor Pattern)(まれ)
• 股関節が曲がる(屈曲)
• 膝が曲がる(屈曲)
• 足首が上がりにくい(背屈制限)
✅ 伸展パターン(Extensor Pattern)(最も一般的)
• 股関節が突っ張る(伸展・内転)
• 膝が伸びきってしまう(伸展)
• 足首が下がり、つま先が地面につく(尖足)
➡️ 多くの脳卒中患者では、「上肢は屈曲パターン」「下肢は伸展パターン」になることが一般的です。
痙縮の原因
痙縮は、脳卒中により運動を制御する神経が損傷することで発生します。特に、以下のメカニズムが関係しています。
1. 上位運動ニューロンの損傷
大脳皮質や脳幹の「上位運動ニューロン」が損傷すると、筋肉の収縮を抑制する機能が失われ、筋肉が過剰に収縮します。
2. 反射の異常
通常、筋肉が急に伸ばされると「伸張反射」が起こりますが、脳卒中後はこの反射が過敏になり、わずかな刺激でも筋肉が強く収縮してしまいます。
3. 長期間の不動
発症後、リハビリが遅れたり、長時間同じ姿勢でいると、筋肉や関節が硬くなり、痙縮が悪化します。
痙縮の治療法
痙縮は放置すると悪化するため、適切な治療が必要です。
リハビリテーション
• ストレッチと関節可動域訓練(ゆっくりと無理なく伸ばす)
• 筋力トレーニング(拮抗筋を鍛えてバランスをとる)
• 電気刺激療法(NMES)(神経に電気刺激を与え、筋肉の収縮をコントロール)
テーピング
拮抗筋に対してキネシステープを貼ることで、筋緊張の緩和を認めたとの報告もされています。

装具療法
• 足首装具(AFO)(尖足の予防と歩行の安定)
• スプリント(手指の拘縮予防)
薬物療法
• 筋弛緩剤(バクロフェン、チザニジン)(筋肉の緊張を和らげる)
• ボツリヌス療法(ボツリヌス毒素を注射し、筋緊張を抑制)
外科的治療
• 髄腔内バクロフェン療法(脊髄に直接バクロフェンを投与)
• 腱切離術・神経ブロック(重度の痙縮に対する外科手術)
まとめ
脳卒中後の痙縮は、日常生活に大きな影響を与えますが、適切なリハビリや治療を行うことで改善が可能です。
ポイントのまとめ
✅ 痙縮には 屈曲パターン(上肢に多い) と 伸展パターン(下肢に多い) がある
✅ 早期からのストレッチやリハビリ が重要
✅ 薬物療法(ボツリヌス療法など)や装具 を活用することで生活の質を向上できる
✅ 重度の場合は、外科的治療も選択肢
痙縮は「治らないもの」と思われがちですが、適切な治療を受けることで症状を軽減し、生活の質を向上させることができます。
リハビリ専門職や医師と相談しながら、自分に合った治療方法を見つけていきましょう!
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