ボツリヌス注射とは?筋緊張緩和への道

脳や脊髄などの中枢神経系が損傷を受けると、運動機能に障害が生じることがあります。

この状態では、筋肉が過剰に緊張したり(痙縮)、逆に緩んだりすることがあります。

特に痙縮は、日常生活動作(ADL)の妨げとなるだけでなく、痛みや関節の変形、

さらには皮膚トラブルを引き起こす可能性があるため、適切な治療が求められます。

筋緊張異常の原因は、中枢神経系の損傷により、運動を制御する神経回路のバランスが崩れることです。

その結果、抑制が効かなくなり、筋肉が収縮し続けるような状態が発生します。

このような場合、ボツリヌス毒素注射は効果的な治療法のひとつとして注目されています。

ボツリヌス注射の仕組み

ボツリヌス注射

ボツリヌス毒素は、Clostridium botulinumという細菌が産生するタンパク質で、神経伝達を阻害する作用があります。

この毒素は、神経終末に作用してアセチルコリンの放出を阻害します。

アセチルコリンは、筋肉を収縮させる信号を伝える重要な神経伝達物質です。

その結果、毒素が注入された部位の筋肉は一時的に弛緩し、過剰な筋緊張が緩和されます。

ボツリヌス注射の適応

筋緊張異常に対して、ボツリヌス毒素注射は以下のような場合に適応されます

1. 痙縮の改善

 手足の筋肉が過剰に緊張し、関節可動域が制限される場合に用いられます。例えば、脳卒中後の上肢屈筋群や下肢伸筋群の痙縮に効果が期待できます。

2. 疼痛の軽減

 痙縮により筋肉や関節が痛む場合、注射を行うことで痛みが緩和されることがあります。

3. ADLや介護負担の軽減

 着替えや移動、食事動作が困難な患者に対して、筋緊張を緩和することで日常生活の負担を軽減します。

4. 整形外科的変形の予防

 痙縮が続くと関節拘縮や変形が進行する可能性があるため、これを防ぐ目的でも使用されます。

治療の手順

ボツリヌス毒素注射は以下の手順で実施されます。

1. 評価

 治療対象となる筋肉を特定するため、医師やセラピストが詳細な評価を行います。筋電図(EMG)や超音波を用いて、筋肉の活動状態や構造を確認することもあります。

2. 毒素の選択と用量設定

 現在、日本ではボツリヌス毒素A型が主に使用されています。商品名としては「ボトックス」や「ディスポート」が一般的です。注射する毒素の用量は、筋肉の大きさや症状の程度に応じて調整されます。

3. 注射

 対象となる筋肉に直接注射します。この際、超音波ガイドを併用することで正確に注射部位を特定します。

4. 効果の発現と評価

 注射後、1~2週間ほどで効果が現れ始め、3~4か月間持続します。その後、効果が減少してきた場合、再度注射を行うことがあります。

メリットとリスク

メリット

 • 筋緊張が緩和されることで、ADLの向上や痛みの軽減が期待できます。

 • 手術を伴わないため、侵襲性が低い治療法です。

 • 繰り返し使用可能で、症状に合わせた個別対応が可能です。

リスク

 • 注射部位に痛みや腫れが生じることがあります。

 • 過剰投与による筋力低下や局所的な麻痺が起こる場合があります。

 • 稀にアレルギー反応や全身性の副作用が生じることもあります。

他のリハビリテーションの併用

ボツリヌス注射は単独で行うこともありますが、理学療法や作業療法との併用が効果的です。注射後のリハビリテーションでは、次の点が重視されます:

ストレッチ

筋緊張が緩和したタイミングで、関節可動域を広げるストレッチを行います。

テーピング

近年の研究にでは、注射した筋肉の拮抗筋(手を曲げる筋肉に注射を打った場合、手を伸ばす筋肉)にテーピングを行うことで、

筋緊張の緩和を見られたとの報告があります。

筋力トレーニング

痙縮が改善した筋肉や周辺の筋肉を強化することで、機能回復を促します。

動作練習

実際の生活場面で必要な動作を練習し、ADLの向上を目指します。

まとめ

ボツリヌス注射は、中枢性麻痺に伴う筋緊張異常の治療において、安全性と有効性が確認された重要な治療法です。

ただし、効果の持続期間が限られているため、定期的な評価と適切なタイミングでの注射が必要です。

また、リハビリテーションとの併用により、より良い治療効果が期待できます。

患者一人ひとりの症状や生活背景に合わせた個別対応が重要であり、医療チーム全体での協力が求められます。

この治療法が適切かどうかは専門医の判断が必要ですが、患者やその家族の理解と協力も治療成功の鍵となります。

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