脳卒中後の亜脱臼:原因、症状、管理・治療方法、リハビリの最新知見

脳卒中後の亜脱臼(subluxation)は、特に肩関節に多く見られ、適切な管理がされないと疼痛や機能障害を引き起こす可能性があります。

本記事では、脳卒中後の亜脱臼について、その原因、症状、管理・治療方法、リハビリの観点から、最新の知見も交えて詳しく解説します。

亜脱臼とは?

亜脱臼とは、関節の構造が完全にはずれていないが、正常な位置から部分的にずれてしまう状態を指します。

脳卒中後の肩関節亜脱臼が最も多く、特に片麻痺患者の影響を受ける側(麻痺側)の肩関節で発生しやすいです。

脳卒中後の患者では、肩関節の支持機構(筋肉、靭帯、関節包など)の機能低下により、

上腕骨頭が肩甲骨の関節窩(グレノイド窩)から下方へずれることが一般的です。

原因

筋緊張低下(弛緩性麻痺)

脳卒中後、特に急性期では弛緩性麻痺(flaccid paralysis)が生じることがあり、

肩周囲の筋肉(特に三角筋や棘上筋)の収縮力が失われることで、重力により肩関節が下方へ牽引されます。

これが亜脱臼の主な原因となります。

筋肉の不均衡(痙縮の影響)

脳卒中後に筋緊張が亢進(痙縮)すると、特定の筋群が過剰に収縮し、バランスの乱れが生じます。

例えば、大胸筋や上腕二頭筋の過緊張が、肩関節を前方や内側に引き込むことで、適切な位置を維持できなくなることがあります。

不適切な腕の取り扱い

介助や移動の際に麻痺側の腕を無理に引っ張ると、肩関節の支持機構がさらに損なわれ、亜脱臼が悪化することがあります。

また、適切な姿勢保持ができないと、持続的な牽引力が加わり、時間とともに悪化することもあります。

上腕骨頭の回旋異常

亜脱臼が進行すると、上腕骨頭が前方や後方へ回旋し、通常の動きが困難になります。

特に肩甲上腕リズム(scapulohumeral rhythm)が崩れることで、腕を動かす際に異常なパターンが生じ、疼痛や運動制限を引き起こします。

症状

肩関節の下垂(肩が落ち込んだように見える)

肩の疼痛(特に動作時や負荷がかかるときに痛みが出る)

腕の可動域制限(肩関節の動きが悪くなる)

自発的な腕の使用低下(痛みや不快感により、患者自身が腕を使わなくなる)

神経圧迫による感覚異常(一部の患者では、感覚鈍麻やしびれを感じることがある)

管理・治療方法

ポジショニングとアライメント調整

(引用:MECHATEX

適切な姿勢を維持することは、亜脱臼の悪化を防ぐうえで極めて重要です。

座位・立位時の肩のサポート(アームレストやクッションを使用)

寝ている間の適切なポジショニング(麻痺側の肩が前方に落ちないよう枕やタオルを活用)

スリングや装具の使用

肩関節を支えるためのスリング(支持帯)や装具の使用は、重力による牽引を軽減する効果があります。

(引用:ottobock.)

(引用:アドバンフィット株式会社)

ただし、長時間の使用は筋力低下を助長する可能性があるため、リハビリと併用することが重要です。

電気刺激療法(NMES)

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近年の研究では、神経筋電気刺激(NMES: Neuromuscular Electrical Stimulation)が肩の亜脱臼管理に有効であることが示されています。

特に、棘上筋や三角筋前部線維に対する電気刺激が、関節の安定性向上に役立つとされています。

ボツリヌス毒素注射(Botox)

痙縮が強く、肩関節の正常なアライメントが崩れている場合、ボツリヌス毒素注射が有効です。

大胸筋や上腕二頭筋の緊張を緩和することで、関節の位置を改善し、リハビリを進めやすくします。

リハビリテーション

促通運動と筋力トレーニング

棘上筋・三角筋の強化(軽負荷のアイソメトリックトレーニング)

肩甲骨周囲筋のアクティベーション(僧帽筋下部・前鋸筋をターゲットとした運動)

関節可動域訓練(ROMエクササイズ)

無理な可動域訓練は亜脱臼を悪化させる可能性があるため、肩甲上腕リズムを意識した可動域訓練を行うことが重要です。

作業療法による日常生活動作(ADL)訓練

安全な着衣動作の指導(麻痺側を守る方法)

環境調整(机や椅子の高さ調整など)

まとめ

脳卒中後の亜脱臼は、早期の適切な管理が重要です。

ポジショニング、スリングの適切な使用、電気刺激療法、ボツリヌス毒素注射、そしてリハビリテーションの組み合わせが有効であると考えられます。

特に、近年ではNMESなどが有望とされており、これらを取り入れたアプローチが今後の主流となる可能性があります。

患者の状態に応じた個別対応を行い、QOL(生活の質)向上を目指すことが重要です。

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