頸髄損傷とは?どんな後遺症が残る?

頸髄損傷は、頸椎の急激な強い衝撃や圧迫によって、脊髄の一部が損傷する状態です。

軽度であれば、手足に痺れが出現し次第に軽快していきますが、

重度だと、手足や首から下の麻痺や、呼吸状態にも影響することがある非常に怖い怪我です。

本記事では、頸髄損傷について詳しく説明します。

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受傷機転

頸髄損傷の受傷機転には、交通事故やスポーツ中の事故、高所からの落下、銃創、外傷、病気などがあります。

その他の原因としては、頸髄に腫瘍などができ、神経を圧迫してしまうことがあります。

特にスポーツ中の事故による頸髄損傷は、若い世代に多く発生しており、

男女比で比べると、男性が圧倒的に多いです。

完全麻痺と不全麻痺

頸髄損傷は、大きく分けて完全麻痺と不全麻痺の2つに分類されます。

完全損傷とは、神経が完全に断裂した状態で、体の下半身や四肢などの運動機能や感覚機能が失われます。

つまり、麻痺した部位を全く動かすことが出来なくなります。

不完全損傷は、神経が部分的に損傷した状態で、一部の運動機能や感覚機能が残っていることがあります。

完全麻痺と不全麻痺の鑑別方法

完全麻痺か不全麻痺かを鑑別する重要項目は、

肛門周囲の触覚/痛覚の有無

肛門括約筋の随意性収縮の有無

肛門反射(肛門に入れた示指で肛門粘膜を刺激すると肛門括約筋が収縮する)の有無

球海綿体筋反射(男性なら亀頭部、女性ならクリトリスを刺激すると肛門括約筋が収縮する)の有無

いずれも「有る」場合に不全麻痺、「無い」場合に完全麻痺となります。

代償尿意

第6胸髄より上の脊髄損傷では、膀胱に尿が溜まった時に、顔のほてりや頭痛が生じたり、頸部後方がむずむずしたりすることがあります。

これを代償尿意と言います。

頸髄損傷患者の多くは尿意・便意を感じることが難しくなるため、このような感覚を日記などに記録しておくと、尿意の代わりになることがあります。

ショック期(脊髄ショック)

重度の脊髄損傷を負った際に、脊髄反射が一過性に全て消失した状態のことをショック期(脊髄ショック)と言います。

つまり、症状としては上記で説明した「完全麻痺」の状態になるということです。

時期的には、1日〜2日と言われていますが、もっと長引くこともあります。

この脊髄ショックで失った機能は、ショック期を抜けると回復します。

逆に言うと、ショック期を抜けた後に残った機能障害は、脊髄損傷自体の影響だと言うことです。

そのため、脊髄損傷後の残存機能は、このショック期を抜けてから評価することが望ましいと思われます。

症状

頸髄損傷の特徴的な症状としては、呼吸困難や手足の麻痺、感覚異常、排尿・排便障害、体温調節障害、性機能障害などがあります。

また、頸髄損傷が高い位置で発生すると、呼吸中枢が損傷するため、人工呼吸器が必要となることがあります。

【頸髄損傷】損傷レベルと残存機能についてはコチラ

運動麻痺

脊髄は、それぞれ頭部から順に支配している筋が決まっています。

頸髄損傷では、損傷した脊髄から下の筋全てが障害されるため、

損傷レベルによってそれぞれ四肢・肋間筋・横隔膜の麻痺が生じます。

高位(C4以上)では、横隔神経の麻痺により呼吸障害が生じ、人工呼吸が必要になります。

感覚麻痺

損傷レベル(高さ)や、脊髄横断面の損傷部位によって感覚障害の生じ方が異なります。

感覚障害の程度は、完全に消失している(脱失)か、低下しているが残存している(鈍麻)か、過敏になっている(異常感覚)かに分かれます。

感覚検査の結果から、完全麻痺か不全麻痺かの判別や、横断面での損傷部位が推測することが出来ます。

自律神経機能障害

①血管運動機能障害

交感神経系の機能低下により、血管の収縮反射が損なわれます。

その結果、血圧を上げることが出来ず、以下で説明する起立性低血圧の原因となります。

②起立性低血圧

臥位から急に座位にした時や、座位から立位になった際に急激な血圧低下が生じ、

冷や汗・生あくび・気分不快・意識レベルの低下が症状として出現し、そのまま進行すると失神に至ります。

臥位に戻ったり、下肢を挙上することで血圧は回復し、容易に意識も戻ります。

③体温調整障害(発汗障害)

麻痺域の皮膚発汗が障害されるため、体内の熱を放出することが出来ず、体内に蓄積されます。

気分不快や眩暈、熱っぽさが症状としてみられます。

④自律神経過反射

頸髄反射や上位の胸髄反射では、膀胱に尿が溜まるなどの麻痺域への刺激によって、交感神経系が優位となり高血圧を呈します。

また、血圧上昇を大動脈弓や頸動脈洞の圧受容器で感知すると、迷走神経が興奮し、副交感神経優位な反応として徐脈が生じます。

⑤排尿・排便障害

脊髄損傷では、仙髄の排尿中枢と尿意を自覚する大脳皮質間の連絡が途絶えるため、

尿意を感じない、膀胱に尿が溜まると失禁してしまう、残尿感が残る、などの排尿障害が生じます。

また、脊髄ショック期では、閉尿や便秘をきたすため、導尿や摘便などの処置が必要になります。

損傷レベルによる症状の違い

頸髄損傷の損傷レベルによって、症状の範囲や程度が異なります。

脊髄の高さによる運動・感覚支配はASIA分類を参考にすると分かりやすいです。

ASIA

(引用:ASIA

治療・回復過程

頸髄損傷の治療は、急性期、回復期、リハビリ期に分かれます。

急性期では、呼吸困難やショック状態に陥った場合には、人工呼吸器や輸液などの治療が必要です。

また、薬物療法や手術なども行われる場合があります。

回復期に入ると、損傷範囲や程度に応じたリハビリテーションが行われます。

リハビリテーションの目的は、運動機能や感覚機能の改善や回復、排尿・排便機能の改善などです。

しかし、完全損傷の場合は、治療によっても回復が見込めない場合があります。

まとめ

今回は、頸髄損傷について簡単に説明しました。

頸髄損傷は、その程度や位置によって症状が異なるため、早期の診断と適切な治療が必要となります。

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