CI療法の創始者
CI療法(Constraint-Induced Movement Therapy)の創始者は、アメリカのランドルフ・N・バイカーズ教授です。
彼は1990年代初頭から、脳卒中後の上肢(手や腕)の機能障害を改善するための治療法としてCI療法を開発しました。
CI療法とは?
CI療法は、脳卒中後の片麻痺患者の上肢の機能障害を改善するための治療法です。
脳卒中などの脳損傷により片麻痺が生じると、患者は片方の手や腕が自由に動かせなくなります。
CI療法は、健常な上肢を制限することで、片麻痺患者が麻痺した上肢を強制的に使うように促し、機能の改善を図る治療法です。
CI療法の構成要素
CI療法には、以下のような構成要素があります。
- 上肢制限:健常な上肢を制限することで、患者が麻痺した上肢を強制的に使用するようにします。上肢制限は、手首までを包帯などで固定する方法が一般的です。
- 集中訓練:制限された上肢を使って、日常生活で必要な動作や、より高次の動作を練習します。集中訓練は、継続的かつ反復的に行うことが重要です。
- フィードバック:患者に達成感や成功体験を与えるために、治療中の運動の成果や進捗状況を定期的にフィードバックします。
負の連鎖 「学習性不使用」とは?
脳梗塞などの中枢性麻痺を生じると、麻痺手による様々な運動思考において、対象者は多数の失敗体験をすることとなる。
そして、その失敗体験が負の報酬となり、麻痺手を使用することいった行動を抑制してしまう。
これと並行して、非麻痺手については比較的正常な運動機能を保持していることが多く、発症前に麻痺手を用いて従事していた活動を探索的に非麻痺手で代償する。
その結果、麻痺手による失敗と比較して非麻痺手では成功体験を経験するため、非麻痺手による代償的な動作を優先的に用いるなどの行動を選択する。
こういった負の行動変容により、非麻痺手の使用頻度が激減した結果、麻痺手に関わる領域の脳組織が縮小してしまう。
(参照:道免和久 竹林崇、行動変容を導く!上司機能回復アプローチー脳卒中上肢麻痺に対する基本戦略ー)
「行動変容」について
CI療法は、患者が自発的に麻痺した上肢を使用することを促すことが重要です。
制限された上肢を使用することで、脳の再編成が促進され、麻痺した上肢の機能改善につながります。
このような自発的な行動変容は、治療効果を高めるために欠かせない要素の1つです。
また、集中訓練やフィードバックを通じて、患者のモチベーショョンを高め、自信を与えることで、治療の成果を最大化することができます。
CI療法では、患者が自己決定的に動作を行うことが重要視されます。
患者自身が動作を選択し、自らの意思で行うことで、より長期的な成果を得ることができます。
また、治療の過程で患者に適切なフィードバックを行うことで、患者が自分自身で進歩を確認することができ、モチベーションを高めることができます。
さらに、CI療法では、患者が日常生活で必要な動作を訓練することが重要視されます。
治療中に訓練された動作を日常生活で継続して行うことで、治療の成果を維持することができます。
このような取り組みによって、CI療法は、脳卒中後の上肢の機能改善に有効な治療法として、広く用いられています。
シェーピング(shaping)
シェーピング(shaping)」とは、CI療法において、患者の動作を徐々に目標に近づける訓練方法の一つです。
具体的には、目標とする動作を達成するために必要なステップを段階的に設定し、そのステップを順に練習していくことで、目標の動作を実現します。
シェーピングは、患者の現状に合わせて目標を設定し、目標に向かって段階的に訓練を行うため、患者の能力に応じた個別化されたリハビリを実現することができます。
また、目標に向かってステップを確実にこなしていくため、患者の自信や達成感を高めることもできます。
具体的な例としては、患者が歩行することを目標とする場合、最初はベッドや椅子の上で、膝を曲げた状態から足を動かす練習を行います。
その後、膝を伸ばした状態で足を動かす練習に移行し、さらに床の上で歩行する練習に進みます。
シェーピングは、目標の動作を実現するために必要なステップを明確にし、それを段階的に練習していくことで、患者の動作の精度や速度を向上させることができます。
CI療法においては、患者の具体的な目標に合わせたシェーピングを行うことで、効果的なリハビリを行うことができます。
行動契約(behavioral contract)
「行動契約(behavioral contract)」とは、CI療法において患者と治療者が協力して治療計画を策定する際に用いられる方法です。
治療者と患者は、治療の目的や目標、行動の変化について合意し、具体的なアクションプランを作成します。
そして、患者が約束した行動を行うことを治療者が支援することで、治療効果を高めることができます。
行動契約は、患者が自らの行動や目標について明確に理解し、治療者と共にその達成に向けて取り組むことで、患者の自己決定能力や自己効力感を高めることができます。
モーターアクティビティログ(motor activity log)
一方、「モーターアクティビティログ(motor activity log)」とは、CI療法において患者の運動機能の評価に用いられる尺度の一つです。
患者が日常生活で行う実際の動作に対して、その運動機能の程度を5段階で評価します。
モーターアクティビティログは、治療前と治療後の比較を行うことで、治療の効果を客観的に評価することができます。
また、治療中に定期的に評価を行うことで、治療の進捗状況を把握し、治療プランの修正や改善を行うことができます。
これらの方法を組み合わせることで、CI療法は患者の運動機能を効果的に改善することができます。
治療者と患者が協力して治療計画を策定し、目標に向けた具体的なアクションプランを立てることで、治療の効果を高めることができます。