廃用症候群とは?原因や対策、リハビリについて解説

廃用症候群という言葉を耳にしたことはないでしょうか?

厚生労働省の報告によれば、要介護状態の原因の約35%が廃用症候群に関連しているとされています。

今回は、そんな廃用症候群について詳しく解説したいと思います。

廃用症候群とは?

廃用症候群(はいようしょうこうぐん)とは、長期間の安静や活動低下によって、身体や精神の機能が低下する状態を指します。

寝たきりの高齢者に多く見られますが、病気やケガでの入院、長期間の安静を必要とする状況でも発生します。

筋力の低下だけでなく、関節の拘縮(こうしゅく)、骨密度の低下、循環器や呼吸機能の低下、認知機能の衰えなど、多岐にわたる影響を及ぼします。

廃用症候群の原因

廃用症候群は主に「使わないこと」によって生じます。具体的には以下のような状況が原因になります。

長期間の寝たきり(脳卒中・骨折・術後の安静など)

活動量の低下(入院、過度な安静、意欲低下など)

認知症や精神的な要因(意欲の低下、うつ状態など)

ギプス固定や長期間の車椅子生活

特に高齢者では、少しの期間の安静でも急激に筋力が低下し、日常生活動作(ADL)の低下につながりやすくなります。

寝たきりの日数と筋力減少の関係

人間の筋力は「使わなければすぐに低下する」という特徴があります。廃用症候群による筋力低下は非常に早く進行し、以下のような報告があります。

1週間の寝たきりで筋力が約10~15%低下

3~5週間で約50%低下

完全な寝たきりの状態では、1日ごとに約0.5~1%の筋力低下

また、筋力だけでなく、骨密度も1週間で約0.5~1%減少するとされています。これは、高齢者の骨折リスクの増加にもつながります。

在宅における廃用症候群

病院や施設だけでなく、自宅での生活でも廃用症候群は発生します。特に以下のようなケースでは注意が必要です。

入院後の退院後、活動量が減少

要介護者が家で寝ている時間が長い

介護者の負担軽減のために、必要以上に動かないようにしている

転倒を恐れて、外出を控えてしまう

在宅での生活では、家族や介護者が意識して活動を促すことが重要になります。

廃用症候群の対策

廃用症候群を予防・改善するためには、「できるだけ早く動く」ことが最も効果的です。以下のような対策を意識するとよいでしょう。

できるだけ早期に離床する

• 手術や病気の回復期でも、医師の許可があれば早めに起き上がる・歩くことを意識する

• 長期間の安静が必要な場合でも、座る時間を増やす、手足を動かす

生活の中で活動量を増やす

• 座位を維持する時間を増やす

• 室内でも意識的に歩く(手すりを活用する、立ち上がりを増やす)

• 外出する機会を増やす

栄養管理を徹底する

• 筋肉を維持するためにたんぱく質をしっかり摂取(肉・魚・卵・大豆製品など)

• カロリー不足を防ぐ(特に高齢者は低栄養になりやすい)

転倒予防と安全対策

• 筋力低下による転倒を防ぐため、適切な靴や手すりの設置

• 必要なら杖や歩行器を活用

廃用症候群のリハビリ

廃用症候群に対するリハビリは、「できるだけ早く、無理なく体を動かす」ことが基本になります。

体を動かす基本的なリハビリ

関節可動域訓練(ストレッチ):関節の動きを維持し、拘縮を防ぐ

筋力トレーニング:軽い負荷での筋力回復運動(セラバンドやゴムチューブを使用)

座位・立位訓練:ベッド上で座る時間を増やし、徐々に立つ動作を取り入れる

歩行訓練

• 歩行が可能な場合はできるだけ歩く時間を増やす

• 自信がない場合は歩行器や杖を活用

生活リハビリ

食事や着替えなど、自分でできる動作を増やす

家事(洗濯物をたたむ、食器を片付けるなど)を積極的に行う

デイサービスや訪問リハビリを活用

心理的なケア

• 廃用症候群では**「動くのが怖い」「意欲が低下する」**ことが多いため、リハビリの継続が難しくなることがあります。

目標を設定して、少しずつ動くことを習慣化することが大切です。

まとめ

廃用症候群は、長期間の安静や活動低下によって筋力・関節・認知機能などが急激に低下する状態です。

1週間の寝たきりで筋力が約10~15%低下し、長期化すると日常生活に大きな影響を与えます。

• 在宅でも廃用症候群は発生しやすく、早期に動くことが重要です。

• 予防・改善にはリハビリや生活の中での活動量を増やすことが効果的です。

「安静=安全」とは限らないため、可能な範囲で体を動かす習慣を身につけましょう。

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homereha

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